本日取り上げる演奏家は、20世紀最高の美音の持ち主「フランチェスカッティ」
一音聴いただけでもすぐにフランチェスカッティの演奏だとわかるほど素晴らしい音色が特徴で、特にイタリアやフランスの作曲家の曲では、まるでヴァイオリンの中でソプラノ歌手が歌っているような音楽を聴かせてくれるフランスのヴァイオリニスト。
生い立ち
1902年に南仏マルセイユ生まれ。両親共にがヴァイオリニストで、特に父親は18世紀の超絶技巧を極めたイタリアの作曲家・ヴァイオリニストであるパガニーニの弟子に師事、フランチェスカッティ自身、バイオリン教育は父親からしか受けていないという稀有な経歴の持ち主。(このことで、フランチェスカッティはパガニーニ直系ヴァイオリニストと呼ばれたりもします)
10歳には既にベートーベンの協奏曲でオーケストラ付きで公開演奏、1924年にはパリ、1939年にニューヨークフィルハーモニー管弦楽団と共演しアメリカデビューし、アメリカをベースとして活躍を開始。世界最高峰のフランス人ヴァイオリニストとして一世を風靡し、世界に活躍を場を広げています。
同郷ピアニスト・ロベルト・カサドシュとのデュオも人気を博した。
まだ余力を残しながらも1975年には演奏活動を引退し、1989年に自身の名を冠した国際コンクールを創設(自身の愛器ストラディバリ「ハート」を売却して運営資金を捻出)するなど慈善的な活動を行いながら、マルセイユ近郊の街で穏やかな余生を過ごしました。
演奏の特徴
美音の持ち主
Youtubeなどでもフランチェスカッティの演奏を映像で観ることができますが、弓を扱う右手は肘を高く上げ、時折小指が弓から離れるほど軽く持ち、根本から先端まで安定した運弓が見て取れます。
また左手は指の腹で幅が広くて速めのヴィブラート、楽譜よりも若干高め(に聴こえる)の音程取りによって、特徴的なキレのある美音が生み出されます。
技術的な点以外にも、フランチェスカッティの内面が音に表出している点もあると思います(バイオリンのように体に接している面積が多い楽器ほど、感情的な面が楽器に移りやすいと思います)。
聴衆を幸せにさせる魔力
美音も去ることながら、フランチェスカッティの音色は人を明るく幸せな気持ちにさせてくれます。例えるならば、南仏の燦々とした太陽、柑橘フルーツを感じさせるような音。
また、生い立ちでも触れたような国際コンクール創設や、後進への無償レッスンなどエピソードが多く残されていますが、(当然会ったこともないですが)フランチェスカッティの優しく明るい人柄が音に乗って聴衆に届いているのは間違いなさそうです。
テクニカルに走らない音楽性
フランチェスカッティの演奏は完璧なテクニックに裏付けされていながらも、決してこれ見よがしのテクニカルに走らない演奏スタイルが特徴。
そもそもヴァイオリンの演奏において卓越した技術は、特に一流ヴァイオリニストともなれば必要で、そうした人間離れした超絶技巧も聴衆を惹きつけるポイントになります。
ただし、テクニックを全面に押し出す姿勢が強いと、聴いている方はなんだか冷めてしまう感覚を覚えます。
演奏技術は音楽表現のひとつではありつつも、演奏家の音で聴衆が突き動かされる何か、はやはり「音」。卓越した技術は大前提で、それをベースに独自の音楽性や磨き抜かれた音によって、いかに聴衆へ感動する音楽を届けることが出来るのか、バランスですね。