名盤の基礎情報
ウィーン生まれのクライスラーは、若くして神童バイオリニストとして活躍しながらも、医学を学び、ロシアの前線で兵隊として戦火を経験した異色の経歴の持ち主、世界的に著名なバイオリニストであった。
19世紀のバイオリニストには珍しく作曲活動にも積極的で、今回ご紹介するクライスラーの自作自演の小品作品集(ピアノ伴奏付きの数分程度のバイオリン作品曲)は、現代においてもアンコールピースとして幅広く演奏されている。
様々なバイオリニストの録音はあるものの、クライスラー自身の演奏がもっとも華やかで、優雅で気品に満ちたメロディとも相まって、クライスラーのハイセンスな節回しを堪能できる作品群となっている。
録音について
作曲者・曲名 | #1 ウィーン奇想曲、#5美しきロスマリン など |
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演奏形態 | バイオリン |
ソリスト | フリッツ・クライスラー(vn) |
指揮者 | なし |
オーケストラ | フランツ・るっぷ(ピアノ伴奏) |
録音年 | 1936-1938 |
レーベル | NAXOS |
名盤チャート
名盤のポイント
曲の良さは去ることながら、他のバイオリニストには出せない、甘美だが甘すぎない絶妙なセンスの良さ。
ゆったりと多めのビブラートに、柔らかく木の温もりを感じる温かい音色は、現代バイオリニストの演奏では、少し物足りなさを感じるほど。
ピチカート(弓でなく右手で弦を弾いて音を出す技法)の丸み、ポルタメント(ある音から次の音に移行する際に音程の境界を曖昧にする、弦楽器ならではの技法)など、彼にしか出せないウィーン風の演奏を楽しむことができる録音となっている。
録音が古いため、協奏曲などのオーケストラとの演奏からは、クライスラーの持つ音をじっくりと堪能するのが難しいが、バイオリンに耳を傾けて音の始まりから終わりまでを堪能できる小品集は、彼のバイオリンを味わい尽くす贅沢なチョイスと言える。