【ハイフェッツ】「完璧とは何か」を体現したヴァイオリニストの王

名演奏家

みなさん、こんにちわ。アビクラです。

今回の記事でご紹介するのは、ヴァイオリニストの王様「ハイフェッツ」。

クラシックに馴染みのない方は聞いた事がない名前かと思いますが、「ヴァイオリニストのトップに君臨するのは誰?」と聞かれれば、必ず名前が挙がるレジェンドヴァイオリニストです。

ヴァイオリニスト頂点の演奏を浴びたい人にオススメ

ハイフェッツがヴァイオリン演奏に革命を起こし「完璧」とは何かを自ら体現したことで、世界のヴァイオリニストは全て彼の演奏と比較されるようになってしまいました。

【ハイフェッツ】浴びクラチャート

ハイフェッツが登場してから100年以上経過しているにも拘らず、彼を超えるほどの個性とインパクトを与える演奏家は今の所いません。これからも現れることはないでしょう。

ハイフェッツの演奏を一度聴いてしまうと他のヴァイオリニストを聴けなくなるくらいの中毒性を放つ名演、ハイフェッツ盤があれば他の録音は要らないとまで言われる名盤も多いです。

ハイフェッツの経歴

ハイフェッツ(1901-1986)は、生涯にわたって世界の頂点に君臨し続けたモンスター的ヴァイオリニスト。1901年にロシア領のヴィリナ(今のリトアニア)生まれのユダヤ系。

3歳でヴァイオリンを始め、9歳でサンクトペテルブルグ音楽院に入学すると当時の伝説的教育者「アウアー」に師事します。

12歳に世界最高峰オーケストラのベルリンフィルで演奏し欧州ツアーを敢行。若干16歳にしてニューヨークのカーネギーホールでデビュー。

デビュー当時ですでに完成し尽くされた独自の音楽性と、字の如く完璧な演奏技術、冷たくも聴こえる緊張感のあるハイフェッツサウンドで、世界に衝撃を与えた天才ヴァイオリニストです。

キャリアの途中で戦争の影響はあったものの、アメリカ移住後はソリストのみならず、室内楽やUCLA教授、編曲者としても幅広く活躍しながら膨大な録音レパートリーを遺しました。

71歳にLAでのラストリサイタルでスポットライトから退くまでの60年以上、一貫した音楽性と人間離れした演奏技術が衰える事なくヴァイオリニスト人生を駆け抜けました。

ハイフェッツがヴァイオリニストの王を呼ばれる理由の幾つかは下記です。

  • 若干16歳のNYデビューの衝撃で「ハイフェッツシンドローム」が大流行。
  • ヴァイオリン技術の限界点を突破し、ハイフェッツ前と後という時代区分を刻む
  • 本当にヴァイオリンか?と思いたくなる冷徹で密度の濃い悪魔的な音色

これらの理由を下記に説明したいと思います。

ハイフェッツシンドローム(症候群)

ハイフェッツシンドロームの流行は、16歳のハイフェッツ青年のニューヨークデビューがきっかけでした。

既にヨーロッパでハイフェッツの名は轟いており、アメリカデビューコンサートには当時のトップ演奏家(クライスラー、エルマン、ジンバリスト等)も多く来場。

ハイフェッツの非の打ちどころの無い完璧な技術、嵐が吹き荒れるような攻撃的な音を前に衝撃を受け、多くのヴァイオリニストが瞬く間に激しいイップスに陥ってしまい、キャリアを閉ざしてしまった演奏家も多くいたことが由来です。

全てのヴァイオリニストのゴールをハイフェッツはスタート地点とし、前人未到の記録を伸ばした超人とも評され、このハイフェッツシンドロームによって、当時大活躍しているハイフェッツ以外の多くの演奏家が彼の影に霞んでしまいました。

如何にハイフェッツのインパクトが凄かったのか想像する事が出来ます。

ハイフェッツサウンドと人間の限界を超えた演奏技術

幼少期に師事した教育者からちなんで「アウアー奏法」とでも言うのでしょうか。

ハイフェッツの奏法の特徴は、ヴァイオリンを高く構え、弓を持つときに手首を高い位置で持ち、非常に早いボーイング(運弓)、演奏中の体の動きは最小限に演奏します。

運弓をする右手は人差し指の第二関節で弓を支え(普通は第一関節が一般的)、弦を上から押さえつけるというか、弦に食いこむような弓捌きによって、独特な唸るようなハイフェッツサウンドが生み出されます。

普通、押さえつけるような運弓では雑音が出てしまう事が多いのですが、ハイフェッツの右手の鋭い感覚による高度な運弓コントロールにより、雑味と冷徹な緊張感が共存する特徴的な音色を生み出しています。

運指を司る右手においても、写真や映像で見て取れますが、骨骨しくもしなやかな指を機械の如く高速に精確にコントロールする事で、ハイフェッツの固くもエネルギーが凝縮した音色に加担しています。

ヴァイオリンはギターとは違いフレットが無いため音程のコントロールが非常に難しいのですが、どんな超絶技巧的なフレーズでもポーカーフェイスに淡々と弾き進めていく姿に、聴衆は度肝を抜かれました。

桁外れの運動神経と完璧な運指による精確な音程コントロールがなす術ですね。

「毎晩せめて一つはまちがった音を出してください、いかなる人間もあれほどの完璧な演奏をするようには出来ていないのですから」

という、ハイフェッツの演奏家を聴き、衝撃を受けた著名小説家ジョージバーナードショーの手紙も残っています。

ハイフェッツ前後という時代区分が出来た

18世紀に様々なヴァイオリン超絶技巧を開発し、限界までヴァイオリン表現を開発し尽くしたパガニーニという作曲家がいます。(そんな彼もパガニーニ前と後の時代区分があります)

パガニーニの後、多くのヴァイオリン演奏家が目指したレベルは、パガニーニが作曲した楽譜の再現に留まるレベル(そこに音楽性を加える事は技術的に困難だと思われていた)なのですが、ハイフェッツはこの人間が演奏出来ると思われた限界の演奏精度をさらに引き上げ、ヴァイオリニストの価値観を大きく変化させてしまいました。

これがハイフェッツの前・後の時代と言われる理由です。

まとめ

ハイフェッツのヴァイオリニストの帝王たる所以をいくつか紹介しましたが、ハイフェッツの特徴的な音楽解釈・演奏スタイルは多くの批評の対照となり賛否両論が生まれました

ただ長いクラシック音楽の歴史の中で、ハイフェッツ以上に聴衆や同業者に莫大なインパクトを与えたヴァイオリニストは皆無である事は間違いありません。

ヴァイオリンを聴いてみたい、どの演奏家を聴いたら分からないという事であれば、まずはハイフェッツサウンドを聴く価値はあります。

是非プレイリストでハイフェッツシンドロームを体感して下さい笑。

good classical music for your lifestyle.

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