名盤のサマリー
バロック時代のイタリア人作曲家トマソ・ヴィタリ(1663-1745)によるバイオリン独奏曲。伴奏にはピアノ、パイプオルガンが用いられる。
バロック楽曲にしては自由闊達なメロディ、感情起伏の激しいカデンツァ(バイオリン独奏部分で演奏家が自由に創作・演奏を許されているパート)などから、同人作曲が疑われていたようで、どうやら19世紀の編曲家 フェルディナンド・ダヴィッドによって改編が加えられた説が有力となっている。
ハイフェッツ(vn)による、燃え上がるゲインが効いたような弦の唸り、地面から湧き上がるマグマのような荘厳なオルガンと、力と力がぶつかり合う競奏となり、他の録音とは一線を画す、非常に重厚な演奏となっている。
録音について
作曲者・曲名 | ヴィタリ・シャコンヌ ト短調 |
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演奏形態 | バイオリン独奏曲(オルガン伴奏) |
ソリスト | ヤッシャ・ハイフェッツ(vn) |
指揮者 | なし |
オーケストラ/伴奏 | オルガン伴奏 リチャード・エルザッサー |
録音年 | 1959 |
レーベル | RCA |
名盤チャート
名盤ポイント
なんといってもハイフェッツの凄まじい音。
バイオリンに鳴ってもらうヨーロッパの演奏スタイルとは対照的に、ハイフェッツのバイオリンを自分のコントロール下で置くサディスティックな演奏スタイルを堪能できる録音となっている。全盛期ということもあり、彼のストラディバリが最大限鳴り響き、大教会の巨鐘のような印象を聴衆に与えている。
ピアノではなくパイプオルガンによる伴奏だからこそ、ハイフェッツの全方位に迸る凄演に追随できるマッチしないかもしれない。
終盤のカデンツァでは、高音オクターブに飛ぶ重音の左手の正確さは勿論のこと、一切の軽さを感じない運弓アップ方向連続スタッカート、オクターブ重音による旋律の密度と、この約9分の演奏を聴き終わったあとには、何とも言えない脱力感に襲われる。