名盤のサマリー
1873年にブラームスがイタリアを訪れた際、その自然の美しさに魅了され着想に至った名曲。不規則で気持ちの良い風や太陽の光を連想させるような繊細かつ大胆なパッセージが印象的で、ピアノの聴かせどころ満載のメロディも壮大で、ピアニストの個性が出やすい曲。
この名曲で外せないのが稀代のドイツ作曲家弾きバックハウス。指揮ベーム率いるウィーンフィルと存分に歌い上げた録音時(1967年)の御年はなんと83歳。
正統なドイツ音楽継承者の一人であり、華やかさや技巧よりもブラームスが楽譜に込めた音楽性を真摯に忠実に再現し尽くしたバックハウスの当演奏は必聴名盤。
↓該当の曲は#1-4
録音について
作曲者・曲名 | ブラームス・ピアノ協奏曲第二番 |
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演奏形態 | ピアノ協奏曲 |
ソリスト | ヴィルヘルム・バックハウス |
指揮者 | カール・ベーム |
オーケストラ/伴奏 | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 |
録音年 | 1967 |
レーベル | DECCA |
名盤チャート
名盤ポイント
当名盤は、聴いていて安心感と落ち着きを与えてくれる。
それがどこから来るのかを考えれば、やはり真摯にブラームスの一音一音に向き合い、紡がれるべき音楽を再現させるバックハウスの哲学者とも言える音楽への姿勢、そして予定調和を崩さずにピアニストへの協調の姿勢を貫くベームの指揮にあるのではないか。
ヴィルトオーソと呼ばれる技巧を全面に出すピアニストも多い中、不要なピアニストとしての個性を出さないことがバックハウスの最大の魅力で、聴衆が安心して身を委ねることのできる音楽がここにあるように思う。聴いていて本当にイヤなところがない。
もう一つ聴衆に安心感を与えてくれる要員が丸みを帯びた音。バックハウスはベーゼンドルファーのピアノを愛用していたことでも知られており、多くの巨匠の標準とされるスタインウェイと比べ、ピアノが木で作られている楽器と再認識させてくれるような温かみのある音が特徴。
バックハウスの誰にも媚びることのない音楽性、そしてまろやかなタッチとベーゼンドルファーの温かみ、ベームとウィーンフィルのピアニストを優しく包み込む懐の深いのオーケストレーションの総合芸術は、ピアノ協奏曲のひとつの完成形とも言える凄みを放っている。