名盤のサマリー
ロベルト・シューマンによって1853年に作曲されたものの、84年もの間演奏されずに1937年にドイツのバイオリニスト、クーレンカンプによって世界初演されたバイオリン協奏曲。
今回名盤として取り上げるバイオリニストはニューヨーク生まれのリトアニア系ユダヤ人であるユーディ・メニューイン。神童として世界に名を轟かせた若干22歳当時の録音は、気持ちの良い音の伸びと艶を感じさせる溌溂とした必聴名盤。
メニューインは30歳を過ぎると精神面のバランスを崩し極度のスランプに陥り苦節の期間を過ごすのは有名な話。研鑽を積みなおし再度スポットライトを浴びる晩年においても、20代前半の鮮やかな演奏を聴くことは出来なくなったため、当時の凄まじい天才度を味わうことのできる貴重な録音となっている。
ナチス政権下においてドイツ作曲家の曲をユダヤ人が初演することは許されずクーレンカンプに託された訳だが、その翌月にはメニューインがアメリカで初演したという歴史がある。
録音について
作曲者・曲名 | シューマン・バイオリン協奏曲 |
---|---|
演奏形態 | バイオリン協奏曲 |
ソリスト | ユーディ・メニューイン(vc) |
指揮者 | バルビローリ |
オーケストラ/伴奏 | ニューヨークフィルハーモニー交響楽団 |
録音年 | 1938 |
レーベル | Warner music |
名盤チャート
名盤ポイント
個人的にも好きなバイオリン曲のひとつであり、シューマンの感傷的なメロディとメニューインの天才的な名演が聴衆を陶酔の渦に巻き込む。
若干テンポや旋律の取り方が揺らぎ、少し味付けが濃い演奏となっているものの、メニューインの卓越した弓捌きと美しい音色、ずば抜けた音楽センスによって、嫌みの無いしっかりとした後味を残してくれる。
もう一つの特筆点はメニューインのビブラート。ゆったりと幅の広い柔らかな左手捌きによって、スケールの大きい演奏表現にもう一段豊かな味わいを与えている。
指揮バルビローリ率いるニューヨークフィルのバックも、メニューインの表現を壊さないよう、一歩引いたオーケストレーションでメニューインとの一体感を与え、古い録音からも聞き心地の良さを与えている。