唐突ですが、様々な音楽を聴かれる方にとって、「クラシック」はなんとなく興味はあるし、聴いてはみたいけど、曲は長いし何か退屈だし、結局なにを聴いたらいいかわからないってなりますよね。
クラシックもたくさんある音楽ジャンルの一つ。
とりわけクラシックとなると、なにやら小難しい知識やうんちくが曲よりも先に来るんですが、これってクラシックに興味を持って貰える音楽好きの方にとってはハードルにしか過ぎないと思うんです。
弊ブログ「浴びたいクラシック」では、まずはリスナーの鋭い感性に、直接クラシックの良さや魅力を感じて貰い、「え、クラシックってめっちゃイケてるじゃん」と思って貰えるような名演奏を音源と一緒に紹介していきます。
今回の特集は「印象的なメロディのヴァイオリン名演奏」がテーマ。
多くの記事ではSpotify のプレイリストなども同時並行で楽しんでいただけるにしています。
曲の小ネタやレジェンド演奏家の紹介も加えていますので、是非目を通して貰えると理解が深まると思います。
それでは行きましょう!
序奏とロンド・カプリチオーソ/ サン=サーンス作曲 / ハイフェッツ演奏
ヴァイオリンに馴染みの無い方でも、この曲の出だしは耳にした事があるかも知れません。フランスの大作曲家サン=サーンスによるヴァイオリンと管弦楽による協奏曲。
オペラだけでなく映画音楽にも積極的だった彼ですが、この曲は1863年に当時友人でもあったスペインのヴァイオリニスト サラサーテに贈られた曲で、美しいメロディにはスペインの情熱的なテイストが散りばめられています。
名曲なので星の数ほどの録音がありますが、今回は20世紀ヴァイオリニストの王の地位を築いたリトアニア出身のハイフェッツ(1901-1987) をピックアップ。
この人を一言で表すと人間史上一番上手くヴァイオリンを演奏する人です。
圧倒的な技術の完璧性と自身の感情の多くを表出せず黙々と弾き進めていくスタイルは当時賛否両論あったようですが、聴いていて非常に気持ちいい限りです。
ハイフェッツは多くのエピソードがあるのでまた別の多くの記事で取り上げたいと思います。
美しきロスマリン/ クライスラー作曲 / クライスラー演奏
1曲目とは対照的な小品。
オーストリアはウィーン出身のヴァイオリニスト 兼 作曲家、クライスラー(1875-1962)によるアンコールピース。
思いっきり上品な香りがするこの曲ですが、ロスマリンとは花ローズマリーを意、美しく愛おしい女性を表現して作曲された曲です。
この曲以外にも愛を題材にした愛の喜び、愛の哀しみとを合わせて、愛の三部作として現代でも広く親しまれています。
ヴァイオリニストとしても20世紀に世界の第一線で活躍したクライスラー。古い録音環境も影響していますが、木の温もりを感じるような甘い音色や、深みのある安定したビブラートを堪能する事が出来ます。
現代でも様々なヴァイオリニストに演奏されていますが、個人的にはやはり本家クライスラーの上品で甘い解釈が一番しっくりきます。
悪魔のトリル/ タルティーニ作曲 / パールマン演奏
印象的な題名が付いているこの曲、ヴィヴァルディやバッハが活躍したバロック時代に活躍したイタリア人作曲家 タルティーニの代表作。
クラシック界(キリスト教絡み?)では悪魔に纏わる逸話が幾つかあるのですが、この曲はタルティーニ自身が見た夢の中に現れた悪魔によって演奏された旋律が余りにも美しく、飛び起きたタルティーニが枕元で書き残したメロディとされています。
彼も自身のどの作品よりも素晴らしい曲と自画自賛しているように、一度聴いたら忘れられない旋律です。
トリルとは音楽用語で、ある起点の音から2度先にある音を高速で交互に反復する奏法。
(この曲のあらゆる箇所に、高速のラリラリラリラリ・・・音が沢山入ってますね)
演奏はイスラエル出身のパールマン。
彼は現代で最高のヴァイオリニストと評されており、オバマ前大統領も「この世界を音楽で少しだけ美しくしてくれる」と本人の前で語っています。
私もカナダでのコンサートで偶然パールマンの演奏に触れる事が出来ましたが、コンサートホール全体を包む温かい空気感は過去に感じた事が無く改めてパールマンの偉大さを再認識しました。
彼に関してもまた別記事で取り上げます。
12のバガテル作品13 より第9番「蜜蜂」/ フランソワ・シューベルト作曲 / シゲティ演奏
有名な方のシューベルトは未完成や死と乙女といった曲が有名ですが、こちら全くの別の同姓同名シューベルト。
ややこしくてスミマセン。この曲だけが後世に残っています。
知名度では選曲していないのですが、蜜蜂が舞い飛ぶ様子が表されていて面白い曲なのでプレイリストに加えました。
ハンガリー出身のシゲティ(1892-1973)。
彼の持つ音には、時に擦れや不安定な揺らぎがあります。
特に技術を要する演奏では音の弱々しさを感じる事から、昔は物足りなさを感じていました。
ただ彼の演奏の本質は、現代の演奏で時折見られるような過度な陶酔感や装飾を排除する演奏スタイル。
相対的に技術的に足りなくても名演奏として完成してしまう非常に高度な音楽性にあります。
聴けば聴くほど深みのある音と演奏で、シゲティ沼にハマる事はお墨付きです。
スケルツォ・タランテラ作品16番/ ヴィエヤフスキ作曲 / パールマン演奏
ヴァイオリン4本線を高速で移弦する右手の弓使いと、複数の弦を同時に演奏する重音の精確な音程取りの高度な技巧をベースに、激しくも華やかなメロディの一曲です。
中間部でも、スピードとは裏腹に装飾的な指使いが相まって、とても難しい曲ですね。
演奏は悪魔のトリルと同じパールマン。
個人的にはパールマンの演奏は太くクリアな音とシンプルな解釈で飽きがこない所だと思います。
こういった高度な技巧を要する曲でも、息を吸うように淡々と弾き進めてくれるので、聴いていてとても安心感があります。
言うまでもなく、気の遠くなるような練習量がベースですが、それだけでは無い天賦の才能が感じられます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は印象的なメロディの名曲を切り口に、作品のみならず歴史に残る名演奏家の事も少し知って頂けたと思います。
今後も様々な切り口からクラシックを紹介しながら、皆さんのライフスタイルがクラシックで少しでも豊かになれば幸いです。
それではまた!
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